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飛鳥事件の本質を見誤ってはならない

在日コリアン人権協会ニュース liber〜リベール〜『在日コリアンの主張』
第119号(2006年5月25日発行)より転載
在日コリアン人権協会 副会長 徐 正禹

〇件の概要と問題点

 5月8日、大阪府警は大阪市東淀川区の財団法人理事長小西邦彦を業務上横領容疑で逮捕した。小西容疑者は財団法人「飛鳥会」の口座から1000万円を自分の口座に移し替えたたことが直接の容疑である。小西容疑者は、部落解放同盟大阪府連合会(以下大阪府連)飛鳥支部支部長の職にある。

 新聞各紙はこれを一面トップで伝え、以降報道は連日続き、容疑内容も日を追うごとに深刻さを増している。約30年間もの間、大阪市(公社)から駐車場の管理・運営を受託しながら、年間2億もの収入を3分の1しか申告せず、さらには利益を個人的に着服したこと。大阪市が過少申告を知りながら、黙認していたこと。財団の運営や小西容疑者の個人的用事に大阪市職員が働いていたこと。旧三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)から職員を事務所に常駐させていたこと。同行から5億もの融資を受け、その内30億が焦げ付いていること。公共工事の談合の仕切り役を行い、多額のリベートを受領したこと。これら多くの収入を税務申告しなかったこと。小西容疑者が暴力団と密接な関係にあり、当該暴力団に資金が還流していたこと、等々。

 これまでも解放同盟関係の事件はいくつか報道されてきたが、今回の新聞の報道姿勢は従来とは異なり、同和対策事業そのものを問題視しているように思われる。 「『人権』『暴力』で威圧」(産経)「利権の温床根深く」「同和優遇、市長も認識」(朝日)。これらの表現は、従来「赤旗」(日本共産党機関紙)が解放同盟を批判する際に用いた見出しである。一連の報道には、小西容疑者への追求にとどまらず、同和対策事業そのものを根本的に問い直そうとする姿勢が伺える。その焦点は、同対法期限切れ後も続く「同和優遇」の打ち切りである。

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 事件は確かに反社会的である。しかし、新聞紙上で露にされた容疑者の個人的着服や暴力団との関係、大阪市の馴れ合い、前例主義といった事柄は事件の現象にしか過ぎない。その奥にある本質は、人権運動の財源のあり方にある。同和事業で問題となった事件の多くが、そもそも運動の財源を捻出することから始まっている。解放同盟の場合、同和事業という行政予算に財源の多くを依存してきた。つまり同和事業によって得られた成果の一部を組織に還元(カンパ)する手法である。この方法は、同和事業が終われば、組織の財源も枯渇することを意味する。結果、組織を維持するために、同和事業を継続させざるを得ず、地域住民の生活向上と差別撤廃という本来の目的が手段となり、組織維持が目的となる。手段と目的が入れ替わるのである。北口氏の妨害行為に見られる、他の被差別問題への介入も、本質は同じである。

 このような財源方法が、本来の道ではないことは、解放同盟関係者といえども一定理解しているはずである。であるならば、人権運動の財源は、いかにあるべきか。答えは至極単純である。他者に頼ることのない、自主財源を確保する他ないのである。このことは、地対財特法ができた段階で、この法律が最後であることから、既に議論の俎上に上がっていた。にもかかわらず、自主財源の具体的方針が確立されないまま、法の期限切れを迎えてしまったことが、問題の始まりである。では何故議論されながらも、方針が確立されなかったのか。それは、自主財源の主張が否定されたからである。今日の解放同盟の中核を担う幹部の大半が、同対法が施行されて以降に運動に入った人たちであり、そもそも自主財源(手弁当)の運動を知らない世代であるため、自主財源の運動がイメージさえできないからである。さらに、深刻なのは、法律が切れることの意味、即ち予算措置がなくなるということのリアリティが実感できないのである。要するに、感覚が麻痺しているのである。

 また、行政の前例主義や激減緩和策(根拠となる法律が切れても、しばらくの間は予算措置を継続する慣習)があるため、大阪府や大阪市の「部落差別がある限り同和対策は必要である。」との見解を鵜呑みにした結果でもある。権力を甘く見た結果と言わざるを得ない。

 自主財源に続く2番目の課題、それは行政の補助金であれ、自主財源であれ、獲得した財源をどのように管理運営するのか、という点である。組織的に管理するべきであることは明らかであるが、その具体的方法論は、未だ確立されていない。つまり、曖昧な部分が少なくないことが、今回の事件を生み出した要因であると考えられる。

 3番目の課題は公開性である。例えば、現在の解放同盟の運動財源がどうなっているのか、これを明確に説明できる同盟員は稀有である。労働組合でも例外ではない。総じて、運動体の財源は、永年その一部を非公開にしてきた。そこに不祥事が生起する要因があった(EX 自治労事件)。この原因は、運動体に対する日本社会の幻想、つまり運動は清く貧しくあるべきとの考えがある。このため、多くの運動体は、財源の一部を非公開にしてきたのである。

 日本の運動体が衰退した原因はここにある。前述した3点の課題の克服が早急に求められている。