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北口裁判の意味するもの−その 

在日コリアン人権協会ニュース liber〜リベール〜『在日コリアンの主張』
第113号(2005年11月25日発行)より転載
在日コリアン人権協会 副会長 徐 正禹

 昨年12月9日、筆者は北口末広氏(近畿大学教授、部落解放同盟中央本部執行委員、同大阪府連合会書記長)に対して裁判を起こした。内容は妨害行為と名誉毀損に基づく損害賠償請求である。北口氏が筆者及び在日コリアン人権協会に対して行ってきた妨害行為については、関係者の間ではつとに知られている事実である。妨害行為は1998年から執拗に行われてきたが、これまでは、あえて反撃めいた行動は控えてきた。理由は以下の通りである。

  1. どのような反撃の布陣を敷こうとも、世間から見れば被差別部落民と在日コリアンの被差別者同士の醜い争いとしか映らず、双方にとっても、また人権運動全体にとってもマイナスでしかないこと。
  2. 北口氏の妨害行為が2000年から、自身のコントロール下にある在日コリアンを前面に出す方式を執りだしたため、表向きは在日コリアン同士の対立構造に仕立て上げられたこと。そのため反撃が結果として、在日コリアン同士の争いになる可能性が生まれたこと。
  3. 北口氏のコントロール下にある在日コリアンに対して具体的に反論すれば、当人達の個人的な生活問題、プライバシーに触れざるを得なくなり、そのような手法は人権運動体として執るべき選択ではないと判断したこと。
  4. 北口氏の在日コリアン人権協会に対する誹謗中傷は、主として企業、行政を対象としており、これら団体の多くは、誹謗中傷に根拠がないことを十分熟知していても、「信じざるを得ない」立場であり、また信じたことにした方が「得策」であるとの打算に基づいた判断を行うこと。従って、真実を伝えることに何らの有効性も存在しないこと。換言すれば、全てを力関係でのみ判断する人達に、時間と労力を駆使してまで真実を伝える努力を行うことは、ほとんど徒労に近い行為であること。

 しかし、その後の状況は私たちのささやかな期待を裏切る展開となり、そのため裁判を起こさざるを得ないこととなった。理由は以下の通りである。

  1. 差別事件を起こした企業、自治体等が北口氏の妨害行為を利用して、事実確認会を拒否するなど、差別に対する居直りを始めたこと。
  2. 同様に在日コリアン問題の啓発、雇用拡大を後退させ始めたこと。
  3. 在日コリアン人権協会傘下の主として事業体従事者達が、北口氏の妨害行為によって事業が著しく後退したことから、在日コリアン人権協会から離れる事が事業を守る道であると選択し始めたこと。中には、北口氏にすり寄る者まで現れ始めたこと。
  4. 北口氏に対して反撃(反論)しないことは、北口氏による誹謗中傷を認めることになるとの指摘が各方面から寄せられたこと。
  5. 北口氏が最も盛んに妨害行為を行っていた2000年当時、筆者(当時在日コリアン人権協会会長)が北口氏の事務所(部落解放同盟大阪府連合会)に約10回程度電話を入れ、面会を要請したが、一度も取り次がれることがなかったこと。2004年にも裁判の直接のテーマになった事件で、北口氏との面談を関係者と共に要請したが、「会う必要はない」と断ったこと。従って、裁判以外に意見交換を行う機会が見出せなかったこと。
  6. 北口氏による妨害行為が、明らかに他の人権団体に対する不当な干渉であるにも拘わらず、北口氏の所属する団体が沈黙を守っていること。この背景には、北口氏の個人的利害や動機以外に今日の日本の人権運動が置かれている、危機的状況が内包されており、これを明らかにする必要があると判断したこと。