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北口裁判の意味するもの−その−

在日コリアン人権協会ニュース liber〜リベール〜『在日コリアンの主張』
第117号(2006年3月25日発行)より転載
在日コリアン人権協会 副会長 徐 正禹

 北口氏は準備書面(2)(2005年8月29日)および準備書面(3)(同年11月29日 いずれもホームページに全文掲載)において、原告(筆者)および在日コリアン人権協会が差別事件を起こした企業から「金品」を供与されたことを列挙している。北口氏が書面で主張するように、ここに書かれていることは「事実」である。

 ところが不思議なことに、だからどうなのかという評価が書面には明らかにされていない。これは、北口氏が柏木教授に語った内容に関する記述だが、裁判の論点はこのとき北口氏が原告および在日コリアン人権協会をエセであると言ったか否かにある。準備書面(3)において、北口氏は「在日コリアン人権協会が、これまで差別事件をおこした企業に対して、金銭的要求を含めてどのようなことをしていたのかについて確認してきた事実を柏木教授に報告し、それに関する同被告(注 北口氏)の見解も述べた。」と主張しているが、書面のどこにも、「見解」らしきものは見当たらない。客観的に見て「見解」とはエセ批判でしかありえないが、それを明らかにすれば、裁判上不利になるとの判断によるものと考えられる。

 さらに北口氏は「多くの企業が同協会に対してよく思っていない」ことの理由を3点にわたって述べている。そのうち2点については在日コリアン人権協会が、企業団体(大阪同和・人権問題企業連絡会、大阪府企業人権推進協議会)に抗議行動をおこしたことをあげている。

 これは上記2団体が、在日コリアンのための就職セミナーの後援を途中で放棄したことから、在日コリアン人権協会が抗議したものであり、人権運動体としては当然の行動である。しかし、北口氏はこれを「不当な圧力」であるとし、「多くの企業が問題視している」と説明している。

 次いで、北口氏は「同協会(注 在日コリアン人権協会)が、某飲料メーカーの差別事件に関わって、当該飲料メーカーから金銭や物品の供与を受けた事実」と「そして特に『研修コンサルタント料』として毎月50万円の金額を3年間にわたって在日コリアン人権協会の関係組織で受け取っていた事実」を述べている。

 これは、麒麟麦酒の尼崎工場(当時)において、在日コリアンのパート従業員が度重なる民族差別に耐え兼ねて、在日コリアン人権協会に相談したことから、確認、糾弾会を行ったものである。麒麟麦酒は、最終確認会で「自社にとっての人権とは同和問題でしかなかった」ことを吐露し、在日コリアン問題の研修は過去皆無であり、また、正社員の採用もなかったことを明らかにした。これらの反省から、3ヵ年にわたって全社員を対象に在日コリアン問題の研修と在日コリアンの積極的採用を確約した。しかし、在日コリアンの研修、採用に関するノウハウが全くなかったことから、これら事業の推進に関わる指導を啓発団体(KMJ)に依頼したものである。金額の設定に関しては筆者も相談に関与した。麒麟麦酒の全従業員対象の研修に際して、講師の選定、手配、教材の選定、採用に関する基準の見なおし、採用方法のノウハウ等々多岐にわたる作業を行うにあたって、仮に麒麟麦酒の社員が自力で行った場合の費用を想定した上で精査した結果、コンサルタントを受けた方がスムーズにかつ安価に推進できるとの結果に達したものである。啓発冊子も含めて全収入は啓発団体の収入に計上されており、このことは2001年大阪府教育委員会が行った当該啓発団体(現 社団法人)に対する検査(監査)結果でも明らかにされている。

 上記3点については、広く周知されていることであり、全く問題のない事柄である。しかし、企業が「問題視」することとは別問題である。企業があくまでも「利潤の追求」を本旨とする以上、直接利益に結びつかない支出を極力避けたいと考えるのは当然である。だからこそ、闘いが存在するのである。企業との闘いが終わるとき、それは差別がなくなることを意味する。

 ならば何故北口氏は、敢えてこの3点を柏木教授に「認識しておいてもらいたかった」のか。ここに問題の本質を解く鍵がある。紙数が尽きたので、内容は次号に譲る。